「寿々谷は他の街より異能力者が多いから、その分トラブルも多いんだ」
ネロは淡々と続ける。
「寿々谷の中では色々な勢力が存在して、仲が良かったり悪かったりするんだけど…」
その中でも特に皆から恐れられている異能力者が、とネロは言う。
「先週ボク達を襲ってきたあの女、”ヴァンピレス”だ」
ネロの言葉に対し、わたしはヴァンピレスと繰り返す。
「異能力は”他者やモノの記憶を自分のものにする”能力」
ボクの異能力とは似て非なる能力さ、とネロは呟く。
「アイツの厄介な所は、異能力をかなり自分勝手に使っている事だ」
…どういう事?とわたしが尋ねると、ネロは頬杖をつきつつ答える。
「どういう事って…先週見た通り、アイツは他の異能力者の記憶を奪おうとするからだよ」
そのネロの言葉に、わたしはえ…とこぼす。
「何でだか知らないけど、アイツは他の異能力者の記憶を奪って回ってるんだよ」
全く、困った奴とネロは溜め息をつく。
「…あ、でも、記憶を奪われるだけならまだ良いんじゃ」
「ンなワケねーよ」
わたしの言葉を遮るように、ネロは声を上げる。