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厄祓い荒正し Ep.1:でぃすがいず その②

「イヤハヤ全く、人間サマの信仰心のお陰でこっちは力ァ貰ってンだ。どっちが偉いか、言うまでも無ェやね」
「どうしました突然に」
「イヤァー? 別にィー?」
「何か腹立たしいなこの御祭神……」
「ンな事よか、もう一杯くれねェかい?」
「駄目です。貴重なお神酒なんですから大事に呑まないと。ほら、せっかく出てきたんですから、仕事してもらいますよ」
「しゃーねェや。我が愛しき神僕に手ェ貸してやるかィ」
本殿を出ると、すっかり荒廃しきった神社の敷地の様子が目に飛び込んできた。何度見ても、この景色には気分が落ち込む。
崩れた石灯籠、倒れた狛犬、片方の柱が折れた鳥居、注連縄が千切れ縦に割けた神木。
「ッたく、何度見ても酷ェよなァー。神社は大事にするモンだって習わなかったのかねィ?」
「妖怪がそんな教育受けているわけは無いのです」
「そッかー……。さて、今日はどッから『直して』いこうかね?」
神様はゴキゴキと音を鳴らしながら首を伸ばし、辺りを見回し始めた。どうせ荒廃しきった風景しか見えないだろうに……。
「ごぶっ」
突然、神様が変な呻き声をあげて、伸ばした首が大きく反って頭を地面に打ち付けた。
「神様⁉」
「痛ッてェ……狙い撃たれたゼィ畜生めが」
「方角は」
「アッチ」
神様は北西の方を指差した。
「では、今日はあちらを『直して』いきましょう」
「オウ」

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将棋造物昼下 前

住宅地のちょっとした屋敷の片隅にある客間にて。
小綺麗な客間で、1人赤髪で赤いスタジャンを着たコドモがベッドに座りつつ古いゲーム機をいじっている。
昔ながらの電子音を鳴らしながら熱心に遊ぶコドモの頭には、犬のような立ち耳が生えていた。
…と、ここで客間の扉が開いて中に青い長髪で白ワンピースのコドモが小箱の乗った箱型の何かを抱えて入ってくる。
赤髪のコドモはパッと顔を上げた。
「?」
どうしたピスケスと赤髪のコドモこと露夏は尋ねる。
青髪のコドモことピスケスはちょっとねと荷物を床に置いた。
「何これ」
露夏は思わず手を止めて身を乗り出す。
「将棋セットよ」
ピスケスがそう言うと、露夏はへーと答える。
「将棋かー」
これが本物の…と露夏は立派な箱型の将棋盤を手で撫でる。
「あら、お前本物の将棋を見るのは初めて?」
ピスケスが不思議そうに尋ねると、露夏はまぁなと笑う。
「昔はずっと家に閉じ込められてたようなもんだからさ」
家の中にないものはよく知らなくてな、と露夏は続ける。
ピスケスはふーんと頷いた。
「…で、なんでこんなモン持ってきたんだ⁇」
お前将棋するの?と露夏はピスケスに聞く。
ピスケスは別にと首を横に振る。
「ただ物置を漁ってたら出てきただけよ」
ピスケスがそう言いつつ将棋盤の上に乗っている小箱を開ける。
中にはたくさんの駒が入っていた。