目の前で突然姿を消したヒトエを探し、カミラは周囲をきょろきょろと見回す。
その様子を、雪の中に倒れ込んだまま、ヒトエは眺めていた。目の前に無防備に転がっているはずの自分を、カミラは何故か認識できていない。
「……私の力。奴は今、私とあなたを知覚できない」
彼女を引き倒し、今はその下敷きになっているチヒロが、耳元で囁く。
「みゃっ……⁉ え、あ、その、ケリに言われて助けに来ました! 初めまして亀戸ヒトエです!」
「うんありがとう私は那珂川チヒロ初めましてよろしく。……ケリさん、また新しい仲間増やしたんだ」
「他にもいるんですか?」
「あと2人ね。まぁ……今の状況で助けになってはくれなさそうだけど……」
「え、どうしてです?」
「とりあえず退いて」
「あっはいごめんなさい」
2人は起き上がり、カミラから距離を取りつつ向かい合った。
「あのカミラって怪人、こっちの魔法が吸われる。多分、直に触れられたら1発アウト。そのまま動けなくなるまで吸い尽くされる、と思う」
「えぇ……あんなに可愛いのに、こっわぁ……」
「かわ……いい……? まぁ良いや。……あんたの力なら、通用しそう」
チヒロがヒトエの手の中の双剣を指差す。
「なんで? 私、これしか武器がないなら近付くしか無くて危険だと思うんだけど……」
ヒトエが持ち上げた剣の刃の側面を、チヒロは指で軽く叩く。
「このくらい『固まってる』と、吸いにくいだろうから」
「あんまり分かんないです……」
「あなたなら勝てる。それだけ分かれば大丈夫。今のあなたはあいつからは見えないから、行っておいで」
「あれ、きーちゃんは?」
キヲンに置いてかれた3人の元へ、ちょうど買い物を終えた寧依がやって来る。
それに続いてピスケスも近付いてきた。
「なんか…拗ねた」
ナツィはそっぽを向きながらこぼすが、露夏はお前が拗ねさせただけだろと苦笑する。
「…そう」
寧依は心配そうに呟く。
それを見てピスケスは大丈夫よと声をかける。
「私たち人工精霊はその場にいるだけで魔力が空間に残るから、それを追跡すればすぐ見つかるわ」
だからそこまで心配しなくてもいいのよ、とピスケスは微笑む。
寧依は静かに頷いた。
「…さて、さっさときーちゃんを探しましょう」
ピスケスは手を叩いて皆の注意を集める。
「早くしないと面倒なことになるかもしれないしね」
ピスケスがそう言うと、そうだなとかうんと皆は返す。
そしてじゃあ行きましょとピスケスは歩き出し、露夏やかすみ、寧依はそれに続く。
ナツィは気まずそうに黙って立ち止まっていたが、かすみに行こうナツィと声をかけられる。
それに対しぎこちなく頷いて、ナツィは歩き出した。
人間であって人間ではない
幻獣だ
力があるから魔力にやられる
魔力があるから力に溺れる
しかしキング・キングは優しいかただ
私の夢の中に現れるかた
私がピンチになったとき、必ず助けに来てくれた
彼は私を妻に迎えたいといい契りを交わしてきた
しかし、私は彼を愛してはいなかった
私には愛してる方がいる