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仔鬼造物茶会 Act 24

「まさかお前、“黒い蝶”‼︎」
琅がそう声を上げると、黒い影ことナツィは琅を鋭く睨みつける。
「…テメェ、ソイツに何してやがる」
ナツィが低い声でそう言うと、琅は何してやがるってこっちのセリフだ!と言い返す。
「お前ら何しに来たんだよ!」
その言葉にナツィは、はぁ?と呟く。
「そりゃあ…ソイツを取り戻しに来たんだよ‼︎」
ナツィはそう叫ぶと、蝶が象られた大鎌を振るいながら琅に襲いかかる。
それを見た琅はキヲンから手を離すと上着の内ポケットから緑色の魔力式銃を取り出しナツィに向けて撃ち始めた。
しかしナツィはそれを易々と大鎌で弾き、琅を脳天から真っ二つにしようと大鎌を振り下ろそうとした。
だが琅は誰もいない己の左側に転がってそれを避ける。
その途端琅の額の左側に1本のツノが生える。
しかし琅がキヲンから少しばかり離れてしまった。
「露夏‼︎」
地上に再着地したナツィがそう叫ぶと、りょーかい‼︎と近くにある倉庫の陰から赤髪にキャップ帽のコドモが駆け出してきた。
赤髪のコドモこと露夏はキヲンと琅の間に入ると琳に向けて包丁を向けた。

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Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑥ Side:玉桜楼

ヒトエがカミラと交戦している間、エイリは少し離れた場所で瞑目し、意識を集中させていた。
「ふぅー……よし」
深呼吸し、目を開く。
「奥義、〈新形三十六怪撰〉。第十一怪、“清姫”」
エイリの魔法【玉桜楼】は本来、九字を切ることにより『5体』の使役存在を召喚するものであり、使役存在の強度は九字切りの完成度に比例する。
対して奥義〈新形三十六怪撰〉は、従来の数のアドバンテージを捨てることと引き換えに、36種の強力な使役存在のうち任意の1体を選択し、召喚できる。
当然ながら九字切りの完成度は術の行使に影響し、一つは使役存在の強度。そしてもう一つは、『実際に召喚される使役存在の種別』。印の完成度が下がるほど、実際に召喚しようとしたものからかけ離れた使役存在が出現する性質を有しているのだ。
「臨」 独鈷印。
「兵」 大金剛輪印。
「闘」 外獅子印。
「者」 内獅子印。
「皆」 外縛印。
「陣」 内縛印。
「列」 智拳印。
「在」 日輪印。
「前」 宝瓶印。
その後、詠唱と同時に、一字毎に右手の刀印で横に、縦に、軌跡を織り重ねるように重ね、最後に右手を左手の中に収める。
これまでの戦いの中で何十、何百と重ねてきた動作であり、それ故にエイリは、その完成度を直感的に掴むことができるようになっていた。
(この感じ…………来た、“クリティカル”!)
戦闘の中での動作を要求される以上、完全な九字切りを成功させることはほぼ不可能に近い。ただ、今この瞬間、敵の注意は完全に前衛のヒトエ一人に集中しており、それ故に叩き出すことのできた『100点満点』。
彼女自身、仲間の庇護を受けた上で、数度しか実現できたことの無い最大威力で、使役存在が召喚される。
下半身を巨大な蛇のそれに置き換えた、和装の鬼女のような怪異“清姫”。エイリを囲うようにとぐろを巻き、鋭い牙の並ぶ口からは、深い淀を思わせる濃い水の香りと、香木が焼ける煙の香りが混ざったような息吹を吐き出している。

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Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑥ Side:閑々子

双剣を手に、ヒトエはカミラと交戦する。
(カミラも私と一緒に結構な高さから落ちたんだし、ダメージはあるはず……!)
しかし、その予想に反してカミラの動作は極めて軽やかで、爪が頬や首筋の僅かな露出を掠めながら、魔力を奪っていく。
「うぅ……」
「あはは! ヒトエぇ、もっとヒトエたべる!」
(……そういえば、さっきのエイリさんの使い魔、鎧みたいな姿だったよね……)
一度距離を取る。しかし、足首をカミラの尾に絡め取られ、その場に転倒してしまう。
「ヒトエ? かんがえごと?」
「うぅ、痛たた……」
「だめだよ? ヒトエはわたしとたたかってるんだから! わたしだけみて?」
「か、カミラ……」
(……私の魔法、【閑々子】。鎧を生み出す能力……鎧が現れるのは、本当に『私の身体の上だけ』?)
「あー、ヒトエまたわたしいがいのことかんがえてる! だめなんだよ?」
ヒトエの爪がチェストプレートに触れ、魔力を分解し吸収しながら、少しずつ沈み込んでいく。
(……仮に、鎧を生み出せたとして……『空っぽの鎧』に何か意味がある?)
「あ、とどいたぁ」
カミラがにんまりと笑い。ヒトエの胸元を爪の先端でなぞる。その微かな感触に、ヒトエは身震いした。
「ヒトエぇ、わたしのかちなの?」
カミラが首を傾げたその時、ヒトエの頭にケリがべちゃりと落下してきた。
『やぁ、君にアドバイスだ』
「え……ケリ、さん……?」
『私が君達に授けた力は、極めて不安定だ。それ故に、些細なきっかけで“爆発”する』
「爆発……?」
『君の場合、【玉桜楼】のあの子の魔法がその“きっかけ”なんだね。爆発とは、出力或いは特異性の異常な発露。それがどのような形で出力されるかは、君次第だ』
ケリは言い残すと、再びどこかへ消えてしまった。
「……スライムきえた?」
カミラが首を傾げてヒトエの顔を覗き込む。
「……奥義」
半ば無意識に、口と魔力が動く。
「〈自賛・髑髏〉」

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終末を巡る_あとがき

琥珀…琥珀色の毛色の大型犬。林檎を拾ってからは林檎をとても可愛がって世話して守ってあげている。割と男前で子供助けたりとかもたまにしてたりする。
林檎…引きずるほど長い耳と真っ赤な目が特徴の小さい兎。喋りがたどたどしいのは兎なのに犬の言葉で喋っているためで、琥珀の言うことはよく聞くいい子。
作中に出た人間…旧世界の人間(画家)が遺したアトリエに興味を持って住んでいる。住んでいたらそこにいた蜘蛛に背中にくっつかれた。

この世界について…直接的ではないが、異様に巨大な『蜘蛛』が世界の荒廃に関わっており、人間の身体の一部にくっついて少しづつ栄養をとったり、脳を若干弄って強制的に共存する生態を持つ。琥珀と林檎はもともと少し特殊な存在で、この世界では珍しい人間以外の生き物。