「よかった、寧依が無事で」
キヲンの笑顔を見て、寧依は少し呆れたような顔をする。
しかしおいお前という声で2人は顔を上げる。
2人から数メートル離れた所では、先程まで寧依に踏みつけられていた琅が立ち上がっていた。
「硫から…硫から離れろ!」
琅は魔力式銃を構えながらそう叫ぶ。
寧依はキヲンを庇うように立とうとするが、その前にキヲンが琅の前に立ち塞がった。
「硫、そこをどけ」
ソイツはお前をたぶらかしてるんだぞ、と琅は低い声で言う。
だがキヲンはやだ!と首を横に振る。
「寧依は、寧依はボクの“家族”だもん‼︎」
「そんな訳ない!」
琅は強く言い返す。
「お前の“家族”は、おれたちだけだ‼︎」
そんな奴、“家族”だなんて言わない!と琅は声を上げる。
しかしキヲンは、そんなことないもん!と両腕を広げる。
「寧依は、今のボクを作ってくれたんだ」
何も分からないボクに色々なものを教えてくれた、見せてくれたとキヲンは叫ぶ。
「っ…………エイリ、さん……」
助けを求める言葉を、ヒトエは寸前で飲み込む。歯を食いしばり、再び口を開いた。
「大丈夫、です」
「そ、そうなの……?」
不安げに見つめるエイリに頷き、ヒトエはカミラを片腕で抱きしめた。
「?」
首筋に噛みついたまま、カミラが反応する。
「カミラ、もう逃がさないから」
「にげないし、にがさないよ?」
きょとんとするカミラに、微笑みかける。
「……そうだね」
短く言い、ヒトエは剣を持ち上げた。その気配に、カミラの目が輝く。
「ヒトエ!」
「っ……!」
振り下ろした刃が、背中側からカミラの心臓を貫く。そのダメージで、カミラはごぼりと血を吐き出した。
「あっははは! まただぁ! ヒトエぇ、ヒトエぇ!」
涙を流しながら笑い、カミラもまた爪をヒトエの背中に突き立てる。
「にっ……!?」
「ふふっ、きょーそーだね? ねぇヒトエ……」
カミラが頬を寄せると、口の端に垂れた黒い血液が、ヒトエの顔を濡らした。
「わたしは、とってもたのしいよ……? ヒトエは、たのしい……?」
「うぅ……た、楽しくなんか……」
カミラの顔が悲し気に歪む。
「……でも、私は真剣だから。だから……」
ヒトエの言葉に、カミラの手にも力が入る。ヒトエの口から赤い液体が垂れ、カミラはそれを優しく拭い取った。
「それじゃあ、はやく、ね?」