カウンターの奥の部屋はかなり広く、様々な機械が置かれている。
その部屋の中心に位置する台の上には、煌々と光る大きなランプが置かれていた。
「さぁ、先ずはあんただ兄ちゃん。魔力操作を解いて、ランプの取手を握ってみな。」
「魔力操作?えっと…はい。握りました。」
魔力操作を解け、と言うエルの言葉に、若干怪訝な顔をしつつ、ミルがランプの取手を握る。
その瞬間、
「…!うわぁ、凄い…!」
ランプの中の蝋燭が、物凄い勢いで燃え始めた。
更に、色が先程までの無色な炎ではなく、軽く青みがかった灰色の炎に変化した。
「…はぁ〜、こりゃ良いモン持ってんなぁ兄ちゃん。任しとけ、あんたの魂にぴったりの杖を作ってやる。」
「やっぱり。私の見立て通りだね。ミルくん、低級魔術訓練は来週まで。再来週からは特殊魔術の座学にしようか。」
「え?た、魂?来週?」
混乱しているミルを置き去りに、好き勝手に話し出す二人。
そのうち、もう良いよ、とリンネに声をかけられ、ミルはそっとランプから手を離した。
昨日の続きです。
読まずとも本編に影響は御座いませんので御安心ください。
6、杖の作り
大抵の杖は「芯」となるクリスタル、大部分を占める木、留め具や装飾としての金属類で構成されています。
主に木で杖を作り、その先に金具でクリスタルを取り付ける、というデザインが定番です。
定番のデザインはあるものの、使う魔術や本人の特性、職種によってデザインは異なり、多種多様なデザインが存在します。
例えば、対人戦闘の多い騎士団所属の魔術師は、「芯」であるクリスタルの損傷を防ぐため、杖を太めに作り、中を空洞にしてクリスタルを入れる、というデザインを好む人が多い様です。
他には、杖の先に吊り下げる型、杖にはめ込む型などがあります。
杖は基本的にオーダーメイドで作られるため、他者の杖を使うのは至難の業です。
芯であるクリスタルの位置や個体差によって、魔力の流れる方向や流れやすさが異なるためです。
7、杖のシステム
杖のシステムは、持っている部分から魔力を流し、クリスタルを経由させて先端に集める、というのが基本的なシステムです。
杖を使うことのメリットとしては、魔術の照準を合わせやすい、魔力の純度を上げる、などがあります。
また、魔術陣の組み込まれた杖であれば、その魔術の詠唱を省略できます。
8、特殊な杖について
この世界には幾つか特殊な杖が存在しているため、御紹介します。
まずは先述の詠唱省略系の杖です。
こちらは主に召喚魔術の魔術陣が組み込まれている場合が多いです。
理由としては、召喚魔術は時間がかかり、詠唱が長くなりがちで、かつ長時間一定の魔力量を保つ必要があるため、詠唱省略が大きなメリットとなるためです。また、それに付け加え、召喚魔術以外の魔術は基本的に訓練によって無詠唱展開や省略詠唱展開が修得できることも大きな要因です。
次は剣で作られた杖です。
基本的に剣と魔術を同時に使う場合、銀などで作られた魔力伝導率の高い剣を杖代わりにするか、普通の杖を使用した魔術で剣を操るか、の二択となります。
それは、杖のシステムを組み込んだ剣は剣として機能せず、剣の機能を組み込んだ杖は魔力が流れづらかったためです。
しかし、この世界に一振りだけ、どちらの機能も完璧に備えたものが存在します。
その名は「エスト・アンバ」。