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黑翆造物邂逅 Act 12

ナツィの言葉にかすみは首を傾げる。
「ずっと雨に打たれてたんだから濡れてるし…」
顔もよく見えないし、とかすみが言いかけたところで、不意にナツィは音を立ててイスから立ち上がった。
かすみはどうしたの?と聞こうとするが、ナツィはそれを遮るように帰る、とこぼした。
「え」
外はまだ雨降って…とかすみは引き止めようとする。
しかしナツィは、いい、とかすみに背を向けた。
「小雨程度なら問題ない」
ナツィはそう言い切ると、足早に物置部屋をあとにした。
「待ってよ!」
かすみは慌てて追いかけて廊下の階段を駆け下りるが、ナツィはちょうど喫茶店に帰ってきて裏の玄関を開けた喫茶店のマスターを押しのけて、外へと飛び出していった。
「…おおカシミール」
今の子は…と玄関先でマスターは言いかけるが、玄関前まで辿り着いたかすみはマスター、と彼の方を見る。
「ちょっと、行ってくる‼︎」
かすみはそう言うと、玄関脇にある傘立てからビニール傘を1本手に取って、長靴を履いて傘をさしつつ外へと飛び出していった。
「…」
喫茶店の玄関には、呆然と立ちつくすマスターの姿だけが残った。

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ラピュタ

宙に浮かぶ島は
夢の果てに

運命に翻弄され、しかし穢れなく気高く
大地を駆け抜ける

見上げる星 優しくて

なのに震えるの胸の中

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愛を灯せ
心が錆びつかないように

愛を灯せ
寂しさで涙流さないように

人の温もりを忘れてしまったのなら

愛を灯せ