表示件数
0

黑翆造物邂逅 Act 13

外へ飛び出していったナツィをかすみが追いかけ始めて暫く。
かすみは傘をさしつつ小雨の降る住宅地を走っていた。
幸いナツィ特有の“気配”が分かるため、姿を見つけられなくてもナツィがどこに走っていったかは直感的にかすみには理解できた。
当人は、小雨程度なら問題ないと言っていたが、ずっと雨に濡れていたからなんとなく放っておけない。
そう思うかすみは水溜まりに足を突っ込むのも気にせず駆けていた。
しかし、かすみは不意に足を止める。
そして辺りを見回し始めた。
「“気配”が、途切れた…?」
かすみは不思議そうにこぼす。
先ほどまで道にナツィの気配が残っていたのに、それがなぜか急に感じられなくなった。
どういうことだろうとかすみは不思議がっていたが、不意にまた別の気配がしてハッと背後を見やる。
かすみの数メートル後方には細道が十字に交差していたが、そこにはなにもいなかった。
しかし、かすみは明らかにする“気配”に対し訝しげな顔をする。

0

痛みに慣れる

痛みに慣れると
涙が枯れる

そして空っぽなのに何故か心が痛む

こんな私に、あなたは優しくしてくれる

だから…

痛みに慣れているはずなのに涙が溢れるんだ

この感情はなんだろう

涙が流れるんだ
冷たい涙ではなく暖かな涙が、

まるで感情を取り戻すかのように