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黑翆造物邂逅 Act 19

「そ、そそそそそんな、お前だって人工精霊の癖に人間みたいに振る舞ってるじゃねーか‼︎」
なんなんだよマジで!とナツィはそっぽを向いたまま声を上げた。
「第一なんで俺のこと知らねーんだよフツー魔術の界隈にいたら知ってんだろ!」
数百年を生きる“黒い蝶”だってのに!とナツィは続ける。
「…なんで、なんで怖がらなかったんだよ」
こんな奴なのに、と一通り思いを吐き出したナツィは最後にポツリと呟き、かすみの方をちらと見る。
その顔は、まだ赤くなっていた。
かすみは目をぱちくりさせてから、それは…と口を開く。
「やっぱり、他人には優しくするものだから?」
かすみはにっこりと笑う。
ナツィは呆れたように、なんだよ…とこぼした。
「そんなのただのお人よしじゃん」
「でもいいんだ」
そうでもしないと、自分の中にはなにも残らないから、とかすみは返す。
ナツィは静かに前を向いた。
「変なの」
ナツィはポツリと呟く。
それを聞いてかすみはナツィの左隣へ移動し、その手をそっと取った。
「行こう」
ずっとここにいる訳にはいかないし、とかすみはナツィに笑いかける。
ナツィは少し頬を赤らめさせて、す、好きにしろ…とそっぽを向く。
かすみはナツィの手を少しだけ握りしめた。