自援護、それはネットではカタカナで「ジエンゴ」とも書かれるプロ野球で定期的に起こるイベント。
野球における援護とは、ピッチャーの勝利のために打撃陣が点を取ることを指す。
しかし、日本プロ野球で巨人やカープ、ドラゴンズを中心にしたセリーグでは投手も打席に立つことがあるため投手が自らバットを振って、自分で得点を挙げてしまうことがある。
これが、自援護だ。
そんな自援護が生んだドラマは数多い。
例えば、のちに名監督になったK投手が41歳と大ベテランと呼ばれるはずの年齢の頃、自身の通算200勝がかかった試合で、自ら放った初ホームランで無事200勝をもぎ取ったあの試合から21年。
記憶に新しいものでは、2年後のシーズンから「投手は打席に立てなくなる」というDh制導入というルール変更が決まったことを受けて「バッティングが好きだからヒットをせめて一本は打ちたい」と語った広島カープのT投手がホームランを打ったことや巨人のY選手が試合を決定づけるタイムリー2塁打を2本ぶちかまして自身初のシーズン11勝を果たしたことが有名だろう。
ところが、そんな場面を見られるのはあと1年強。
「野球は筋書きのないドラマ」
来年は投手の自援護がどのようなドラマを生むのだろうか。
そんなこんなで、自分は急遽ネロと耀平と遊ぶことになってしまった。
そのままネロに引っ張られてショッピングモールへ行き、息つく間もなく3階のゲームセンターへ連れ込まれる。
そしてネロはゲームセンター内をうろうろした後、可愛らしい鳥のぬいぐるみのクレーンゲームの前で立ち止まり、小銭の投入口に小銭を入れ始めた。
「よーし、今日こそ取るぞ~」
ネロはそう言いつつクレーンゲームのコントローラーを操作し始める。
耀平はその隣でもう少し右じゃね?とか色々とネロと話し合っていたが、ふと後ろを見やる。
彼はクレーンゲーム台に寄りかかってい2人の様子を見ている自分に気付いて、こちらに近付いてきた。
「ごめんなー、ネロの急な思いつきに付き合ってもらっちゃって」
ちゃんとおれが止められれば良かったんだけど…と耀平は頭をかく。
「アイツ、時々突拍子のない事をするからさ」
正直どうしようもないんだ、と耀平は苦笑いした。
自分はふーんとうなずく。
…とここでネロがあーダメだ~と声を上げた。
彼女の方を見ると、ネロはクレーンゲーム台の透明な板張りの部分に額をつけて駄々をこねている。
何でお腹は空くの
何の為に人は生きてゆくの?
青空覗けば気分も晴れる。
雲が作り出すシンフォニー
空に描けばまたひとつ青さも引き立つ
今日も晴れ。