(いやぁ……実際に見てみると結構ヤバい火力してますね? 人間くらい余裕で真っ二つになっちゃいそう)
(そんな威力を平気で人に向けてんのあの人!?)
(こーれヤバい感じですよぅセンパーイ)
二人は不可視の斬撃を捌き続ける“メリーさん”の陰に隠れつつ、声を潜めて話し合う。
(で。『これ』が効き目薄なのは分かったんで、火力レートでこっちの不利が確定しちゃったんですけど……どうします?)
エアガンを軽く掲げながら、燿子が尋ねる。
(……一度仕切り直して良い?)
(モーマンタイでっす)
「それじゃ……頼むよ、“メリーさん”」
『ん~。すぅ……』
召喚体が何かしようとしている気配に、愛弥は一旦攻撃の手を緩める。
(何かする気だな? ま、何してこようが斬り払ってやるけど)
『……もしもーし! 私ぃ、メリーさーん!』
召喚体は口の前で手をメガホン代わりにし、大声で愛弥に呼びかけ始めた。
『今ぁ、あなたの後ろにいるのー!』
次の瞬間、愛弥の視界から召喚体の姿が消え、同時に背後から羽交い絞めにされる。
(ッ……『背後への瞬間移動』、ってな感じか!?)
「この程度ッ!」
背後に向けて放った斬撃が、“メリーさん”を袈裟斬りの要領で両断する。拘束を逃れて愛弥が正面に視界を戻したその時、清嘉と燿子は既に路地から姿を消していた。
「何だったのよアイツら……」
そう毒づきながら、愛弥は振り返り己の背後に転がっているはずの“メリーさん”の残骸に向き直ろうとする。しかし、そこには端切れの一片すら無く、交戦の痕跡は彼女自身が刻んだ斬撃痕の他に何も残っていなかった。
「だからなんッで消えてんだよ真っ二つに叩ッ斬ったろうがよォッ!」
苛立ちに満ちた怒鳴り声とゴミバケツを蹴り倒す音が、路地裏に響き渡った。
あなたは凄い努力家だ。
時には寝る間を惜しんで働き
みんなの為に動いている。
私はあなたを尊敬しています。
民を守るために
攻撃
国を守るために
攻撃
守るために攻撃…
守るために盾を掲げるだけではダメなのか?
攻撃
攻撃
攻撃
…
何の為に?
愛のために出来ること
考えてみてください
切ない今。
私の気持ちと世界はうらはら。
切ない気持は
どこに投げ捨てたらいいのか分からない。
まだ私は子供でいたい。
まだ甘えていたい。
またもう一回甘えさせてもらえるかな
幸せだった9年間。
「こーんにーちはぁ~。お姉さんがキヨセ・マナミちゃんですかぁ?」
最初に口を開いたのは、燿子だった。
「あ? 誰アンタら。人の邪魔しやがってよォ……」
「「…………」」
(ガラわっる!)
(逃げて良いかなこれェ)
二人を射貫く敵意に満ちた視線に、思わず沈黙する清嘉と燿子。
「せっかく人が気持ち良くストレス発散してたのによォー……!」
(やっば近づいて来てるー)
(笑い事じゃねえんだけどぉっ!?)
彼我の距離が5mを切ったその時、燿子が腰の後ろのホルスターから白とオレンジに塗装されたエアガンを抜き、相手に向けて1発撃ち込んだ。
「あたっ」
「…………」
「…………」
「テメこのガキいたっ、あたっ」
燿子は躊躇うことなく2発、3発と続けざまに撃ち込んでいく。あまりにも唐突で理解不能な状況に、清嘉は呆然と見ていることしかできない。
「いたっ、ちょ、やめ、おい、こらっ」
パスッ、パスッ、パスッ、と気の抜けた発射音が鳴り続け、遂に弾倉内のBB弾が撃ち尽くされる。燿子は表情を変えないままグリップのボタンを押してエアガンを軽く振り、弾倉を地面に落として替えの弾倉を再装填する。
「いたっ、ちょ、おい、やめ、ろっ、て、言ってんだろがァッ!」
「わぁキレたぁ!」
「そりゃいきなり無言でエアガン連射されたらキレるよ!?」
「クソガキが舐めやがって……! どうせ3秒後には忘れてんだ、こうなりゃ全力で叩き潰してやらァ……!」
元来『殺傷力の具現』である怪異の力を宿す“語部”たる二人には、その少女、愛弥の変化が直感的に理解できた。『殺意』が膨れ上がり形を成すような感覚――“語部”が『異聞』の力を発現する際の気配である。
それを感じ取れたからこそ、清嘉は咄嗟に動くことができた。
「っ、“メリーさん”!」
彼もまた、自身の異聞能力を発動した。身長1mほどの少女型の召喚体が二人を庇うように現れ、右手の鉤爪を構える。それと同時に、召喚体の爪に鋭い衝撃が叩き込まれる。
『ぬ、ヌヌヌ……りゃぁっ!』
打ち上げるようにその破壊力を受け流し、“メリーさん”は防御に成功した。直後、その余波がビルの壁に流れ、深い斬撃痕を残す。
「何だァソイツ……」
「いやぁ、へへっ……どうも同類ッス……仲良くしようぜ?」
理由も無く泣きたくなる日を何と呼ぼうか。
気づいてる。気づいてるんだろう。
ある筈の理由見向きもしないで。
もがいてる自分を美談の引き出しにしまって。
情に訴えかける僕の人生に
回答するのは僕だけなのに、
決め手は他人(よそ)にある、
ように言い聞かせて現実から逃げようとして、
他責に加勢している。
一度真正面からぶつかって怪我でもしようよ。
同じ箇所から血が出てる旅人に肩を貸そう。
さすれば僕は、