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少年少女色彩都市・某Edit. Outlaw Girls Duet その④

触手は筐体を破壊することなくただ理宇だけを執拗に追跡していく。理宇はゲームコーナーの中をひたすら逃げ回り、格闘ゲームコーナー、メダルゲームコーナー、再びクレーンゲームコーナーと走り続けたところで、前から襲い来る触手に挟撃され、再び拘束を受けた。
首、両手首、両足首を絡め取られ、完全に身動きができない状態で空中に持ち上げられる。
「うげっ……! た、たすけて先輩……!」
身じろぎして抵抗するが、エベルソルの力はかなり強く、全く歯が立たない。そのうち胴体にも触手が巻き付いていき、更に締め付ける力が少しずつ強くなり始めた。
「せ、先輩……どこ……? ロキ、先輩……」
首の触手も締め上げられ、意識が遠のいていく。完全に気を失う直前、ロキの光弾が触手の拘束を吹き飛ばし、理宇の身体はそのまま床に落下した。
「リウ、変に逃げ回るからサポートが遅れたよ。ごめん」
「ぁぅ……それは、ごめんなさい」
「謝らないで。立てる?」
駆け寄ってきたロキに助け起こされ、理宇は再びスティックを生成した。
「すみません、まだ戦えます。ロキ先輩は下がってください」
「ん、頑張れリウ」
再び始まった触手の猛攻を捌き始めた理宇を置いて、ロキはゲームコーナーからひとまず脱出した。

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鉄路の魔女:夢破れてなんちゃら その①

電信柱の上で蹲るように眠っていた鈴蘭は、朝の眩しさに目を覚ました。
凝り固まった手足を解すために大きく伸ばし、そのままバランスを崩し地面に落下する。
「ぶげっ…………いたい……」
強かに打ち付けた後頭部をさすりながら立ち上がり、鈴蘭は歩き出した。ガードレールをひょいと跳び越え、未だ始発も動かない早朝のBRT専用道路の上を進む。
目的地は、とある踏切跡。最近は毎朝通う、ある種『お気に入り』となったそのスポット。その遮断機の上に腰を下ろし、右手首を見る。
普段はポンチョ風の衣装の下に隠れている機械の右腕。その装甲の下は、部分的な廃線によって不完全に幻影化している。BRTへの移行が無ければ、影響はこの程度では済まなかっただろう。
そう考えながら右腕をしばらく眺め、鈴蘭は再びその腕を衣装の下にしまった。これまで生きてきて、人間を観察して得た知識によると、彼らは時間を知りたい時に手首を見るらしい。それが『腕時計』という外部装置を必要とするところまでは気付けないまま、小首を傾げてただ時が過ぎるのを待つ。
数十分後、始発バスが真横を通り過ぎた。
「や」
短く呼びかけつつ右手を挙げる。当然答えが返ってくるはずは無く、鈴蘭は周囲を眺め始めた。
時間の経過とともに、少しずつ、本当に少しずつではあるが、人通りも増えてくる。
そして、1つの軽いエンジン音が近付いて来るのに気付き、鈴蘭は表情を輝かせてそちらに目を向けた。
そちらからは1台の原動機付自転車が近付いて来て、1度減速してから踏切跡を通過する。
「やぁ、少年!」
その運転手に、先ほどよりも明るく呼びかけ、右手をひらひらと振る。気付かず去っていく後ろ姿を見送り、一瞬の思案の後、鈴蘭は遮断機から飛び降りた。

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鉄路の魔女:夢破れてなんちゃら その②

“鉄路の魔女”は基本的に、子どもにしか感知できない。鈴蘭が腕を失う原因にもなった大災害の頃、少年期にあった人間でも、十数年を超えた現在、社会人になった者も少なくない。ただ不老不死の魔女である鈴蘭には、時間経過による変化が理解しきれず、かつて交流し共に遊んだその人間が自分を無視している理由が理解できなかった。
専用道路の上をぽてぽてと歩き、2駅分ほど歩き続けたところでふと足を止める。
「………………や」
目の前の黒い影に、右手を挙げながら声を掛ける。人間の赤子の頭部程度の大きさだったそれは、鈴蘭の声に反応して全高数mほどにまで膨れ上がった。
「駄目だよ。こんな風に道を塞いじゃ。迷惑になるんだよ」
幻影は首を傾げるように変形し、目の前の魔女に突進を仕掛けた。
鈴蘭は右手だけでそれを受け取める。幻影の質量と速度が生み出すエネルギーは破壊力として機械腕を軋ませ、装甲の随所からは損傷によって火花が飛び散る。
「む…………」
空いた左手を大きく後ろに引き、軽く握った形に固定する。その手の中に、六連装グレネードランチャーが生成される。
「そー……りゃっ」
射撃では無く、銃器そのものの質量を利用し、幻影を殴りつける。
幻影を引き剥がし、煙の上がる右手を開閉する。
「まだ……動くかな。よし」
その手を強く握りしめ、それと同時に機械腕が爆発し、装甲が弾け飛んだ。

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他人様の企画を勝手に紹介していく

先月から始まりましたテトモンよ永遠に!さんの企画『テーマポエムを作ろうの会』。

ルールは簡単。しかし二陣営が必要です。
まず設定原案側。投稿作品の登場人物でも、外部で書いてるキャラクターでも、今回即興で作った子でも良いのでキャラクターの設定を書いて投稿します。
この時タグに『テーマポエムを作ろうの会』『〇〇の設定』の2つを入れる。「〇〇」の部分はそのキャラクターの名前ですね。
次にテーマポエム制作側。好きな設定を選んで、その子のテーマとなるポエムを書いて投稿します。この時タグに『テーマポエムを作ろうの会』『〇〇のテーマ』を入れる。「〇〇」はお察しの通りキャラクターの名前です。

期間は6月いっぱい。ナニガシさんは先月までの時点でかなりの量設定を投下しているので、誰かテーマ書いてくれないかなー……。チラッチラッ

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深夜の迷子 宵_3

ゆずの身体が曲線を描いて飛ぶ。…こんな感覚は人生初のバンジージャンプ以来だ。喉が痛むほどの叫び声をあげたのはちょっと前のお化け屋敷以来だ。
「痛っ」
混乱状態のゆずを正気に戻したのは、ゆずの身体をせんちゃんが受け止めたときの痛みだった。
「雑に扱ってすまんな。"あれ"は光が苦手だから、ゆずが月の光を受けてれば追ってこないだろうと思ってつい」
「ついって…」
せんちゃんが見下ろす先には、こちらを見失ったのか『神隠し』が忙しなく動いていた。
「木の上を移動するのは疲れるから、やっぱり普通に逃げた方が良いな」
「それ大丈夫なの?」
「正気、あれ以外にも面倒なのはたくさんいるから…運だな」
「ええ…」
「夜明けまでには山を出よう」
「うん」
ゆずがせんちゃんの手を握ると、向こうも握り返してきた。

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「崩壊世界見聞録」より エミィの設定

名前/エミィ
誕生日/6月21日
体重/6キロ
身長/50センチ(尻尾は含まない)
好物/新鮮な魚
嫌いな物/眩しいもの、魚卵
座右の銘/何とかなる
性格/無口。普段から飄々としており、カナの良き(?)師匠。たまに小難しいことを言うが、ただただ思ったことを口にしているだけのことが多い。

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鉄路の魔女 「眠り」 1

「おねぇちゃんはさ、どうしてさいきんへんになっちゃったの?」
「そう?変、かな?」
「うん、なんか、つかれたおとーさんみたいになっちゃってるよ。」
「そうなの?」
「うん!だから、きっと、びーるのんだらなおるね!」
「そっか。」
「うん!じゃあ、おねぇちゃん、またね〜!」

山吹は小さな男の子に軽く手を振って見送り、溜め息を一つ吐いた。
そのまま振り返り、黙って線路へ飛び降りる。
ふわり、とスカートのリボンが揺れる。
山吹の身につけているものは、どれもこれも少し古いものだ。が、不思議と不潔感や古臭さを感じない。
早朝のほぼ無人の駅。
唯一人のいるホームへ目をやる。
白髪混じりの頭の、和服の女性。
今度は、そちらのホームへと歩き始める。

(...どうせ見えていないのだろうな。)

山吹たち「鉄路の魔女」は、子供にしか認識・接触できない。
稀にできる大人も居るそうだが、片田舎のこの駅では会えないだろう。