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深夜の迷子 宵_3

ゆずの身体が曲線を描いて飛ぶ。…こんな感覚は人生初のバンジージャンプ以来だ。喉が痛むほどの叫び声をあげたのはちょっと前のお化け屋敷以来だ。
「痛っ」
混乱状態のゆずを正気に戻したのは、ゆずの身体をせんちゃんが受け止めたときの痛みだった。
「雑に扱ってすまんな。"あれ"は光が苦手だから、ゆずが月の光を受けてれば追ってこないだろうと思ってつい」
「ついって…」
せんちゃんが見下ろす先には、こちらを見失ったのか『神隠し』が忙しなく動いていた。
「木の上を移動するのは疲れるから、やっぱり普通に逃げた方が良いな」
「それ大丈夫なの?」
「正気、あれ以外にも面倒なのはたくさんいるから…運だな」
「ええ…」
「夜明けまでには山を出よう」
「うん」
ゆずがせんちゃんの手を握ると、向こうも握り返してきた。