何も知らなくていい。 僕があの時言いかけた言葉も、繋ごうとした左手も、あげようとしていた貴金属も。 何も分からなくていい。 あの雪の日、僕が何を思って君を抱きしめたのかも、 あの雨の日、どうして傘を持っていなかったのかも。 何も覚えていなくていい。 僕があげたあれもこれも、また君が僕にくれたあれやこれも。 すべて忘れてくれればいい。 僕も忘れるから、きっといつか忘れてしまうから、君が先に忘れてくれれば。