どうしようもないほどに似合うキャップのつばを弾いて。
爪弾き足りないギターの音に二時間ほどただ酔った。
味気ないビルをしゃぶり尽くして、色すらも朝焼けに溶けだした。
爪弾き足りないギターの音が二時間ほど漂った。
金曜日の夜に似ていて勘違いしそうになったが、これは水曜日の昼間。時間がさまよった。
針葉樹、手に突き刺さったのを無理に抜いて。
少女。俯いたまま少しニヤつきやがった。
お断り。
ああ、足りない足りない足りてない。
このまんまじゃ眠れない。
足りてないな、足りない足りない。
このまんまじゃ予想もつかない。
どうしようもないほどに静かな夜にビビって。
爪弾き足りない。足りない思い出を少しライターの火にかざした。
風弱まって来たのを少しだけ覗き込んで、爪弾き足りない。思いがけない出会いにマッチで火をつけた。
知らない街を歩いて、後から不意に気配したから。
ボケっとした頭で振り返る。知っているような顔の誰か。
「公園が近くにあるからそこで寝てろ」
丁重にお断りしてまた歩き出した。
考えは未だまとまらないで朝焼けにそっと水を零した。
老人のランニング、飛び立つ鳥達。いつの間に世界にたった一人。さっきの男のおかしな声がまだ頭に溶けきらず残ってる。
ああ、足りない足りない足りてない。
このまんまじゃ眠れない。
足りてないな、足りない足りない。
このまんまじゃ予想もつかない。
ああ、足りない足りない足りてない。
このまんまじゃ死ねない。
足りてないな、足りない足りない。
このまんまじゃ天国も地獄も。