賑やかな街の中に落ち着きたくて
暮らしから逃げ込むように迷い混んだ
小さな図書館は心細い窓の光
どことなく懐かしい匂い
あの頃俺は何か心踊らせていた
時を刻む音の中
角の席でひたむきに字を辿るお前に
俺はいつしか目を奪われた
お前は少し暗がりで
立ち並ぶ本を指でなぞった
次の話を探すその眼は
まるで覚めることを知らなかった
お前は気づくだろうか
夢見てるまま
俺にはついに気づかないだろうか
俺は哲学書の棚の前で
知らずにお前を真似ていた
居心地の良さに毎日と通った
お前はいつもそこにいた
言葉を交わすことも
目を合わすこともなく
だけど二人はそこにいた
いつから通わなくなっただろう
俺はここへ戻ってきてしまった
俺はあの頃描いた未来とは
外れた今を生きている
訪ねたそこには
お前はいなかった