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作り手が意図していなくても結果的に現代社会の象徴になっている作品

 納豆をかき混ぜていると味噌汁が煮立ったようなので火を止め、カップ麺の空き容器に注いで部屋に戻るとそこに納豆はなく、代わりに浴衣姿の女がいた。
「味噌汁を煮立てると香りが飛んでしまって味が落ちるんですよ」
 上目遣いで、女が言った。わたしは一呼吸置いてから、「余計なお世話だ」とこたえ、「テーブルから降りたまえ」と続けた。女は降りなかった。わたしはかまわず椅子に腰掛け、味噌汁をすすった。
「お食事は、味噌汁だけですか?」
 女がわたしに顔を近づけて言った。わたしは味噌汁を飲み干してから、「そういえば納豆はどこだ」ときいた。
「わたし、納豆の精です」
「そうか、やはりな」

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