ひどくくすんだ飴玉ひとつ。
苦くて苦くてどうにもならない苦さに、ずっと一人、頬を濡らしてる。
溶かしきってしまえば、すべて、後味も忘れるくらいに消してしまえば、きっと楽になれるだろうに。
それでも僕は、これを溶かしきる勇気がないのだ。ほのかに香る甘い匂いを消したくなくて、ずっとずっと、頬を濡らしながら。
コロコロ転がす末はいづこに。
ちょっぴりシワのよった、頬の裏側を舐めながら
飴玉くるくる、奥歯の間。
塩味の泪、ふと薫った口のなか。
(飴玉は最後まで噛めないし呑めないし。)
(これってきっと、知らない間に流れて乾いてる泪と同じだ。)