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もう物語はいらない

「賢さとは、なんなのでしょう」
 納豆の精が言った。
「さっき出たが、脳の使い方によってそれは決定される。現代に生きるわたしたちが考える賢さとは、対人関係スキルを含めた総合的情報処理能力の高さを指す。つまり、メタ認知能力の高さだ。メタ認知とは、認知を認知することだ。また、認知しているということを認知すること。自己客観化能力と言いかえてもいい。言うまでもないが、なかなかこれが難しいのだ。人と議論してヒートアップしているときなどは冷静さを失い瞬時に自己客観視ができなくなったりする」
「どうしたら脳を発達させることができるのでしょう」
「生まれ持っての才能もある。発達のプロセスにおいてある程度注意力散漫でないといけない。脳の性能が低い人間は物理的な視野がせまい。物理的な視野のせまい人間は社会的な視野もせまい。こういう人はメタ認知能力を発達させることはできない」
「……なんだか、よく、わかりません」
「わかるかわからないかよりわかろうとすることが大事だ」
 やはり物語が始まらなかったほうがよかった。

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