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ロシア文学

「セルゲイ、こっちだ」
「久しぶりだなアンドレイ。……君は考えていることも個性的だがファッションも個性的だ」
「ありがとう。いまどき、ファッションは個性的だが中身はステレオタイプなんて奴ばかりだ。しゃべりで気を引けないから見た目で気を引こうとしているだけなんだ」
「気を引くためのファッション、威嚇のためのファッション、いずれにせよファッションは表現だ。……やあ、アレクサンドル。……君はいつも謙虚だな。無知で世間知らずで劣等感の強い人間というのは、自分の立場をおびやかさない人間に対して尊大に振る舞うことで自尊心を満たそうとするものだが」
「俺は無知じゃない」
 アレクサンドルがぼそり、つぶやく。
 エカテリーナがまた泣き出す。彼女は常に情緒不安定で、暇さえあれば泣いている。
 

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