桜が散ると、あなたは僕の前からいなくなった。
軽い嘘みたいで笑えない。もっと話したかった。
桜の花弁は春雨に濡れ、踏まれて汚れてしまった。
軽い生命などありえない。例え桜の花弁一枚でも。
Ah!
肩を落として歩く、家までの道のりで
あなたは僕の手を、そっと握ってくれた
何度も思い出した感触を、今、忘れ去ろう。
桜が散ると、あなたは僕の前からいなくなった。
春の夢ならば醒めてくれ。もっと話したかった。
したためた手紙は結局、切手も貼らずにしまった。
手遅れか、ゲームオーバー。神様、これはどっちですか?
Ah!
しょぼくれた背中に、平手を打ち付けて
あなたは僕のことを、そっと慰めてくれた
何度も繰り返したあの日々を、今、忘れ去ろう。
いっそ僕も、思い出とともに。
春雨に溶けてしまえばいい。
傘もささずに立ち尽くして、何故かあなたを待っている。
そして僕は、ふやけた指で、
震える指で手紙を裂いた。
涙も拭かずに立ち尽くして、心はあなたを待っている。
Ah!
似合わない格好で、僕の手を取って
あなたと僕だけの、世界を漂った
最後の春のこと、僕だけは忘れずにいよう。
いっそ僕も、思い出とともに。
春雨に溶けてしまえばいい。
傘もささずに立ち尽くして、何故かあなたを待っていた。
でも、やっぱり風邪を引いただけで。
あなたは来なかった。
あなたは来なかった。
あなたは来なかった。