モーターに温まったガスが吹き出して
鉄の匂いと混じりあった。
君は階段から一番離れた乗り場。
そのか細い脚で隙間をまたいだ。
息を止めて
人をかき分け
ボヤける目は君だけを映した。
僕は走った。
そして掴んだ。
その手を、
君の手を掴んだ。
掴んでいたんだ。
掴もうとしたんだ。
ただ、
届けようとしたんだ。
僕の伸ばした手はかっこわるく遮られ
ドアの向こうに君がいた。
走り出す機械を止めることができなら
瞳に飛び込んた春の蒼。
手の中に感じる
君が落としたキーホルダー。
ぬるい空気が僕の汗に触る。