肌だけがほしいなんて、冗談を
本気にしそうな夜がある。
それなら私は腕だけがほしい、
うそだよ。
なんにもない時間がある。
マグカップに注ぐお湯が溢れていても気にしないよ。
どろどろ心が溶けてゆく。
ハート型の容器に入れて、早くなおさなくちゃ。
ぎゅっと抱きしめてもらえたら、君はなにがほしいのって聞こうかな。
肌がほしいと言われたら、腕をちょうだいと答えるよ。
でもやっぱりいらないや。
そんな君なんていらないよ。
江國さんの本に、唇だけが欲しいって素敵な解説を書いた女の人がいます。
熱い熱湯で溶かしたような、こころはインスタントではないけれど。
いるもの、いらないもの、やっぱりいるもの。うそ、ほんと、うそ。
こころなんて。
唇だけが欲しい、素敵ですね。
ほしいと言えないものと言えてしまうものが、交錯して、迷子になります。
見えないってむずかしいです。