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LOST MEMORIES~prologueⅢ~

「イニシエーションだよ。
お前は今年16歳、成人する。その、通過儀礼だ。」
パプリエールは固まる。
「……聞いたことがありません。」
「話したことがなかったからね。」
顔をしかめるパプリエールを気にせず、父は続けた。
「内容としては、人間界の視察だ。そして、お前と同じように送り込まれている西洋妖怪がいるはずだから、その者たちと情報を共有すること。」
頭がついていかない。人間界とは、いつか本で見たあの人間界だろうか。魔力も何も持たずして、自分たちと同じような容貌である人間という存在がいる、あの人間界。
「……聞いたことがありません。」
「話したことがなかったからね。」
デジャヴである。
父からだけでなく、母からだって聞いたことがない。まして、何らかの文献で見たことすらない。
「人間界なんて、本当にあるのですか。」
「ああ、存在するよ。」
「魔力がなくて、どうやって身を守るのですか。」
「それを視てくるのだよ、パプリ。」
声は優しいが、パプリエールは口をつぐむしかなかった。そういった圧力がある。
「あちらでは、基本魔力は使えない。そして、使う必要もない。そういった町で、お前は過ごすからだ。付き人を遣るから、生活について心配することはない。」

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