0

LOST MEMORIES~prologueⅥ~

このことを、一体どれくらいの人物が知っているのだろうか。王室の行事ほど大袈裟にやるものもなかろう。それなのに。
自室へ戻るも、悶々としてしまう。今から、書物庫へでも行ってみようか。
いつの間にか窓は閉められ、風は入ってこない。メイドだろう。自分のもやもやした気持ちを吹き飛ばしてくれるものは何もなかった。
書物庫へ向かったものの、結局鍵がかけられていた。たまたまなのかもしれないが、それでさえも父の、イニシエーションとやらの中にいるようで、パプリエールは辟易していた。
父は確かに何かを隠している。ただの"通過儀礼"ではないような気がしてきた。
しかし時間は無情にも過ぎていく。すべては付き人を質問攻めの的にしよう。
夜が近づき、覚悟を決め、父の部屋へ再び向かう。その決心は、王宮以外での生活を知らない姫だから成せる技でもあった。

「ついておいで。」
パプリエールの存在を認知すると、立ち上がり言う。
「そこの本棚を、押しておくれ。」
ある予想をもって押すと、下に続く階段が現れる。地下にある隠し部屋といったところだろうか。
キャンドルに灯をともし、続くよう促す。
あまり歩かずして、扉が現れた。扉というより、枠,といった方が正しいような、そんな扉。そして、枠に囲まれたその空間が光っている。
「もう、時間だったか……。」
そんなことを、父は呟いた。父の方を見ると、うっすらと目元が光っている。
パプリエールは無意識的に視線をそらした。
「ここが、人間界に繋がる道ですね。」
確認だ。横ではうなずく気配がする。
「私、行きますね。」

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。