同時に、強く抱き締められる。いつぶりだろう、父に抱き締められたのは。
あまりにも急なことで、驚きはしたものの、のんきなことに思いを馳せてしまう。
ふと思う。やはり、何か裏がある。たかが成人の通過儀礼でここまで取り乱す親がいようか。母は最後まで姿を現さなかった。メイドはいつも通りのようだったのに。
やはり付き人を問いただすしかない。
「……すまない……」
唐突に聞こえた小さい声。音にするつもりではなかったらしいそれを、パプリエールは聞こえなかったフリをした。
ゆっくり父の胸を押して離れる。
「次にお父様とお会いするのは、成人の儀でしょうか。立派に成長した姿を見せられるよう、努力します。」
にっこりと微笑んだ。
そして、扉へ踏み出す。あれ以上父の愛情に触れては、出ていくものも出ていかれなくなる。
父の変わらないその愛を再認識できただけで、今は十分だった。
振り返らずに足を踏み入れることは、思っていたよりも簡単だった。
PS;すみません、何の前置きもなくプロローグに終止符を打ってしまいました。Ⅵをあげ終わった後で次が最後と気付いてしまい、こんな形に…。
次から、やっと本編が始動致します。パプリエールが人間界へついてからのお話。始めはもっぱら付き人とのやりとりになると思われますが、プロローグより断然しゃべらせるつもりでいます。
どうぞ、一緒に楽しんでくださいね。