このチャールズとは、面識があるように思えてならない。しかし、記憶を手繰り寄せる限り、初めましてである。このような容貌の青年を忘れるだなんてことができるだろうか。
「……お嬢さま?よろしいですか?」
「え、ええ。続けて。」
チャールズは困ったように息をつくだけに留まった。
「そこで、ですが。ここは仮名文化なので。」
どういうことだろう。
「高校では、祝 瑛瑠(はふり える)と名乗っていただきます。」
「……はぁ。」
間の抜けた声になってしまう。
諦めの境地。いっそ、開き直りの境地である。
パプリエール、もとい祝瑛瑠は受け入れた。
「つまり、パプリエールではないまったくの別人として、人間として生活していけば良いという解釈でいい?」
「物分かりがはやくて助かります。」
にっこりと微笑む。
瑛瑠はその笑顔に聞く。
「それでは、魔力を使う必要がないと言われたのは、どういうこと?」
「人間は魔力を持ちませんから。」
一瞬の思考停止。
「……確かに。」
魔力を持っているからこそ、相手を傷つけ得る。傷つけられないために魔力を持つ。お互いに釣り合った魔力を持つことで、争いは抑止される。
そうなると、魔力を持たない人間はそういうことはないのだろうか。
またもや心を読んだかのように、
「人間は人間なりに相手を傷つけるものを作り、傷つけられないように再びにたようなものを作り、同じように抑止させるようなシステムになっているので、私たちとさして変わりません。」
そんなことを言う。