2

LOST MEMORIES Ⅹ

ぱち、と目が覚める。一瞬どこか考えた。
――人間界。
昨日、位置を確認した壁掛け時計。時間、6時。落ちそうな瞼で、緩い思考を巡らす。寝ては、駄目。
ベッドから体を起こし、メイドを呼び出そうとなるところをこらえた。ここは人間界。
顔を洗いに行く前に、リビングに寄る。そっと顔を覗かせると、チャールズが既にいた。黒いフレームの眼鏡をかけ、本を読んでいる。
瑛瑠に気付き、顔をあげた。
「おはようございます、お嬢さま。さすがですね。」
「……おはよう。はやいのね、チャールズ。」
おはようなんて、魔界にいて使ったことがあっただろうか。
静かに扉を閉める。
顔を洗って部屋に戻り、制服を着る。等身大の鏡の前で一回転をする。
「うう、やっぱり短い……。」
呟いて、先程寄ったリビングに戻る。すると、チャールズが先程と同じ体勢で本を読んでいた。
さっきは気づかなかったが、テーブルに朝食が置かれている。
柔らかいにおいだ。そして、瑛瑠は思う。
(これも、当たり前ではないんだよね。)
席について、チャールズに言う。
「チャールズ、ありがとう。」
チャールズは顔をあげた。少し目を丸くしている。
そして、瑛瑠に微笑んだ。
「どういたしまして。
……そんなお嬢さまに、良い言葉を教えてあげましょう。」

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。

  • わー、もう!気になる〜(笑)
    魔界とかパラレルワールド(たとえば有栖川有栖の「夢物語(作家小説)」のような)ってやっぱり一昔前と云うか、ヨーロピアンと云うか、たとえば石造りの街並みとかふわふわのドレスとか…
    今のファッションって異様なんだろうなぁ〜って(笑)

    レスありがとう。名前の件だけど間違えてるひと、実はけっこういます(笑)
    十年近く前に(それも最初に考えていたのが使えなくて咄嗟に)創った名前で、読みにくいのが悪いんです(笑)半角カタカナなんて今どき変換できないケータイが多いのにね。
    わかってるのにわざわざ、ちゃーくんとか訛って呼ぶ子も昔はいたし、名前なんてお互いがわかればなんでもいいの。好きに呼んでくれれば返事をしますから(笑)そんなに恐縮しないでー!

  • シェアさん》
    レスありがとうございます!ⅩⅠにも追伸としてお伝えしようと思っていたのですが、どうにも食事シーンで"いただきます","ごちそうさま"の無いということに我慢できなくて。笑 必ず入れようと思っていたシーンなんです。これで、私の中で自然に動かすことができるのでよかったです(笑)

    名前の件、ありがとうございます。名前に関する認識が似ているようで個人的に嬉しく思っています…(図々しい)。私が間違えていることが公式化しまして、すみません(笑)これからもシェアさんと呼ばせてください!