本を閉じ、眼鏡をはずす。
「良い言葉?」
「はい。それは"いただきます"です。
この国では、食べ物や作ってくれた人への感謝の気持ちを表すそうですよ。
食べ終わったら"ごちそうさまでした"。
ね?良い言葉でしょう?」
瑛瑠も微笑み、頷いた。
「いただきます。」
チャールズはソファから腰をあげ、瑛瑠の前の椅子に座る。
瑛瑠は食べつつ、チャールズに聞く。
「昨日もだったけれど、あなたは食べないの?」
「はい、とりあえずは。」
そう言ってコーヒーを口にする。
瑛瑠はまた聞く。
「さっきの言葉、教えてもらったの?」
「ええ、そうですよ。」
「誰から?」
「友人から。」
「この国の?」
「もちろん。」
へーともほーとも言えない音を出す。そうして、ふと手元の料理をみる。
「……美味しい。上手だよね、チャールズ。」
「ありがとうございます。」
微笑むチャールズに、瑛瑠は言う。
「私にも教えてほしい。」
チャールズは不思議そうにする。
「ご飯は私が作りますよ?」
瑛瑠は首をふった。
「興味があるの。何か、作ってみたい。」
「そういうことなら。」
チャールズはおかしそうに笑った。
よくわからないけれど、笑われたということに関して頬を膨らませる瑛瑠。
「どうして笑うの。」
「可愛らしいと思っただけですよ。」
「からかわないで!」
横を向いてしまった瑛瑠に、今度は困ったように微笑うのだった。
PS;
"いただきます" "ごちそうさま"のない食事シーンは、私のなかで書いていて非常に不自然なものでした。そのため、こういった形でいずれだそうと思っていたので、ここに繋げられてよかったです。