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LOST MEMORIES ⅡⅩⅠ

職員会議を終えた先生は、軽く説明をして、生徒を廊下に並ぶよう促す。先程と変わらず、必要最低限のことしか話さない。番号順に並べということだったが、この団体行動に 瑛瑠は驚かずにいられなかった。
前も後ろも、廊下中に人、人、人。
チャールズが言うには『まわりの人の真似をしてください。式中はただ座っていればいいです。』
ふと、あの彼が目に留まる。
まわりの様子をうかがうでもない。
自分と同じような境遇であるなら、慣れていないことだらけではないのだろうか。
つかめない人である。
「瑛瑠さん、隣同士みたいだね。」
不意に声がかかる。望だ。長谷川と祝の間に人はいなかったので、どうやらそういうことらしい。列は2つということだ。
「ぼーっとしてたみたいだけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
言い辛そうに口を開く望。
「あの……別に、敬語じゃなくていいよ?」
呆気にとられる。
どうして急にそんなことを。たしかに、そうかもしれないが。
「癖のようなものですから、気にしないでください。」
それでも納得には至ってないように見える。
「……長谷川さん?」
「う、ううん、癖ならしょうがないよね!」
そう言って、前を向いてしまった。
基本敬語だ。それは、そうマナーとして教えられたからに過ぎない。チャールズやお世話係、メイドに使わないのも然り。立場云々ではなく、その場面には相応の対応があるということだ。
だからといって相手に強要する気はないし、自分と違うからといってどう思うわけでもない。口調も、個性のひとつだ。大切にされるべきものである。
と、瑛瑠は考えるので、唐突な望の発言には、どうしても疑問を抱いてしまうのであった。

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