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Free Fall Traveler

家に帰ろうと
自転車を精一杯こぐ
ただ、一本道
惰性に少し身を任せ
ふと空を見上げる
ああ、ただ青い空に
夕日を浴びた無窮の空に
影を纏わせた雲が
それもまた夕日を浴びて
連なっている、どこを見ても
思い思いに浮いている
もう一度、力いっぱい漕ぎ始める
そうしたら、まるで
あの空を渡っていくようで
あの雲をすり抜けていくようで
前方に広がる夕景に
自由落下する、重力加速度が増していく
ああ、その時の心臓の高鳴りと言ったら
その時の、えも言えぬ爽快感ときたら
風を一身に受け、それでもなお追いつかない
深淵の、切り裂くような蒼さの宙ときたら
しかしその時、気づいたのだ
自由落下の旅はもう終わり
壮大な、荘厳な夕に
浮かぶ、私の家を見つけたのだ
振り返れば、遠く燃える斜陽が
私の目をも真っ赤に燃やさんと、その咢を開けている
夏の暮は、こんなもんじゃあないぞと、威嚇している
下校中の旅人は、しっかりと目に焼き付けて
決して忘れは致しませんと言ってから、自転車を泊め
そして、家の戸に入るのだった

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