「初めまして。ちょっといいですか?」
2人は驚いたように顔を見合わせる。
そして、笑った。
「初めまして。」
「大丈夫だよ。」
楽しそうに笑う2人を、瑛瑠は首をかしげることで笑う理由を問う。
ひとりの子がにっこりする。
「初めましてって、使い道あるんだね。
そうやって話しかけられたの初めて。」
そういうことか。では、何と言うのだろう。
尋ねると、ちょっと考えるようにしてもうひとりが答える。
「ねえねえ、とか?」
そう言いながらまた2人は笑う。
声をあげて笑うことが、今までにあっただろうか。はしたないと言われたか。はたまた、そもそもそこまで楽しいこともなかったか。
なんだか、羨ましいと思ってしまう。
「ごめんね。で、どうしたの?」
顔を向けてくれた。
「鏑木先生のことなんですけど……。
お二人は、中等部からの方ですか?」
「うん、そうだよ。」
「あ、瑛瑠ちゃんもファン入り?」
にこにこする彼女たちに瑛瑠は驚く。
「どうして私の名前……」
もちろん瑛瑠は彼女たちの名前は知らない。
「珍しい名前だったから、黒板のあの張り紙見て覚えちゃった。かわいくていい名前だよね。」
今日はたいそう名前が褒められる日のようだ。
「鏑木先生の何を知りたいの?さっき十分質問に答えてたと思ったけど。」
面白そうに彼女たちは聞いてきた。