「ありがとうございました。そろそろ失礼しますね。」
二人は頷いて手を振る。
「うん、また明日ね。気を付けて。」
鞄を持ち、扉に手をかける。
もう一度手を振ろうとして振り返った。
「あ、ねえ瑛瑠ちゃん。」
すると、瑛瑠よりも先に口が開かれる。
「はい?」
輝くような笑みは相変わらず眩しい。
「瑛瑠ちゃんさ、笑った方が断然かわいいよ。」
何を言われているのかわからなかった。
「わたしたちみたいにツボ浅いのもアレだけどさ、笑うと楽しくなるから。少なからず、これからは学校にいる間がほぼ1日を占めるんだからさ、楽しまなきゃ。どうせ同じ時間、みんな与えられてるんだしね。」
「知ってる?表情筋上げるだけで人って明るい気持ちになるらしいよ。」
そう言って頬を指さす。
なんて底無しに明るい子達だろう。これも、楽しくしよう意識しているのだろうか。
「今度こそじゃあね。引き留めてごめん。」
首を振り、微笑む。
「うん、またね、二人とも。」
手を振って教室をあとにした。
不思議な場所である。不思議な人たち。
思い返せば、瑛瑠には友人らしい友人はいなかった。
よく、この経験したこともない大人数との交流に、不安らしい不安を抱かなかったな自分。
妙なことに感心しながら情報を整理する。