2

LOST MEMORIES ⅢⅩⅢ

「ただいま帰りました。」
「お帰りなさい。」
リビングにはチャールズ。決まってソファで本を読んでいる。このときだけはどうやら眼鏡なので、なんだか得をした気分になる。
「手を洗い、着替えてきてください。お昼ごはん準備しておきますから。」
栞を挟んで眼鏡を置き、立ち上がる。
瑛瑠は、はいと応えてリビングを出た。
多少の肌寒さは残るものの、暖かい日差しが心をわくわくさせる。洗面台にある窓は少し開いていて、昼の暖かさと共に、菜の花の香りを運んでくるようだった。そういえば,と通学路に菜の花がかたまって咲いていた場所があることを思い出す。
お腹はすいている。気化熱によって寒く感じた手を守るように、かけられたタオルで拭き、部屋に戻る。
楽な服に着替えて先生から渡された手紙を手に、再びチャールズのいたリビングへと戻る。
キッチンからテーブルへ、料理が運ばれてくるところだった。
「あ、お嬢さま。手伝ってください。」
王宮にいるときは絶対に言われなかった言葉。
付き人っぽくないと薄々思っていたが、瑛瑠はこちらの方が好感が持てた。
手に持つ手紙をテーブルの端に置き、イエスと応えるかわりにチャールズのもとへ駆け寄った。
「チャールズは、私の付き人の前は何をしていたの?」

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。