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七月七日

 むかし、某大手企業の重役の娘で、織女という、まあまあ美しい娘がいた。
 織女の母は、織女の兄には甘かったが、織女には厳しかった。織女は厳しい母から一刻も早く逃れたかったので、大学二年のとき、法学部の牽牛という男と結婚した。牽牛の実家は織女の家より格上だったから親も文句は言えなかった。それに織女はすでに身ごもっていた。
 息子の太郎(覚えやすい名前にしたのは将来政治家にしようという考えがあってのことだろう)が小学校に入学するころ、大学時代の友人から、出版社の仕事をしてみないかと持ちかけられた。悪くない条件だったし、織女は幼少期から社会で自己実現したいと考えていたのでやってみたいと思った。牽牛に相談すると、猛反対された。牽牛の家は伝統的な金持ち。牽牛は、女性は家庭を守るもの。女性が家庭を守らなかったら家族は崩壊する。家族の幸せが持続的な成長につながる。家族が幸せだから財界は安泰なのである。といった考えにどっぷりつかっていたから、織女の考えが理解できなかった。
 この件をきっかけに、夫婦関係はぎくしゃくし始めた。ある日、太郎の教育方針をめぐって姑と大喧嘩した織女は怒りにまかせ太郎を連れ、実家に戻った。
 織女と牽牛は、それから間もなく離婚した。太郎の親権は織女が獲得した。牽牛とは、年に一度、太郎の誕生日の七月七日に会う取り決めになっている。

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