間もなくして望が戻ってきた。
「待たせちゃってごめんね。」
瑛瑠は足元に置いていた鞄を肩にかけ、大丈夫ですと微笑み望の横に並んだ。
聞いてもいいものかと思いつつ口を開く瑛瑠。
「さっき、鏑木先生がここに来たんです。長谷川さんを探していました。」
「うん。」
その相槌には何の感情もない。
「長谷川さん、図書室へ何をしに来たんですか?」
「もしかして瑛瑠さん、ぼくに何かしらの疑いをかけたがってる?」
冷たいその声に思わず立ち止まる。1歩先へ踏み出しかけていた望は、その力で振り返る。
昨日今日のやりとりでは見たことのない顔だ。口角は上がっているが、眼が笑っていない。
「霧に何言われたか知らないけど、瑛瑠さんには、他人の眼からぼくのことを見てもらいたくないかな。」