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LOST MEMORIES ⅧⅩ

気を付けるべき人物かどうかの探りを入れていたというのは事実。しかし、怒らせるつもりではなかった。
ここは、言い返してはだめ。本能がそう言っていた。
「ごめんなさい、そういうわけではなかったんです。ただ、先生が長谷川さんを探していたから。仕事に支障がでてはいけないと思って。」
我ながら良い返事。
望はふっと雰囲気を和らげた。
「ぼくは、頼まれ事の用事が済んで、図書室には通りかかっただけなんだ。」
確かに、自分が調べものだからといって、図書室に来る人がみな調べものだとは限らない。
「瑛瑠さんを見つけたから入ってきただけだよ。」
微笑む望に先程の冷たさはない。

ほぼ確信に近い疑いは残ったものの、それが何なのかわからない。
「帰ろう?」
とりあえず刺激をしてはいけない。はいと微笑み、横へ並ぶ。

ここまでに散りばめられていた手がかりに気付くのはもう少し後の話。

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