運転手が車の下から手を引き抜くと、その手には黒く重厚なものが握られていた。
真っ黒な四つの円筒。
赤や緑、青の導線。
黒のバックに赤く光る7セグメントの「06:26」。
そして、断続的に鳴る、鋭い電子音。
「じ、じ、時限爆弾だ...!」
Dはすっかり腰を抜かしてしまった。運転手は目を見開いたまま驚愕の表情である。Sは完全にパニック状態だ。
「どどどどどどうしましょう?!」
「あ、あ、あわ、慌てるな!おおお落ち着くんだ!」
「二人とも落ち着いてください!」
運転手が二人をたしなめる。しかしその当人もひどく落ち着きがない。そうこうしているうちに、残り時間は「05:58」を表示している。
「こ、これって、解除しないとマズいんじゃないですかね...」
「何を言ってるんだ、今すぐ逃げるんだ!」
「しかし、このまま逃げては、F国の人々を犠牲にしてしまいます!」
「むう...。だが、それならどうすればいいと言うのだ」
「私が解除しましょう」
「「ええッ!!!」」
突然の運転手の申し出に二人は思わず声をあげた。
「本当に、本当にできるのか...?」
驚愕を隠しきれず、Dが言った。
「正体のわからない人とは常々思っていたけれど、まさかこれまでとは思わなかったわ...」
Sも目を見開いたままそう言った。
運転手は全く耳を貸さないで爆弾に向かっている。ハサミとドライバーを手にしてなにやら真剣そうである。仕方なく、Dはこの得体の知れない男を見守ることにした。