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LOST MEMORIES CⅩⅢ

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煌々と燃え上がる暖炉の火が暖かい。パチパチとたまに弾ける赤が、耳に届く。
少女は、母の膝の上から離れ、窓際へ行く。曇った窓ガラスを小さな手のひらで拭いた。
水滴同士が繋がり、雫となって線を描く。窓が泣いているように見えて、悲しくなった。
「お兄ちゃんはいつ帰ってくるの?」
外の、ぼたぼたと落ちるような重い雪を見ながら少女は尋ねた。見渡す限りの白は、王宮の建物や像、アーチなどをどんどんその色で染めていく。白が何にでも染まる色なんて、嘘だ。
「この雪が溶けて、花が咲き始める頃よ。」
少女にはそれが、とても長いものであるように感じた。
「お兄ちゃんは、何をしているの?」
後ろに立った母親は、小さい我が子を撫でながら微笑む。
「国を守っているのよ。」
それがどういう意味なのか分からなかった。ただ、兄に早く会いたいと、それだけだった。
「パプリ、おいで。」
振り返ると、母が手を広げている。だから、少女は吸い込まれるように抱きついた。
母は女性を抱き締めていた腕を緩め、目線の高さを同じにする。そして、少女の赤みがかった頬を両手で包んだ。
「今日は、神殿に参りましょうか。」

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