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LOST MEMORIES CⅩⅨ

同年代の子どもと話すのは、ほぼ初めて。まわりに同じくらいの年の子どもはいなかったから。
「あなたのお兄さんも?」
「僕のは姉ちゃんだけど。」
横の扉の前に立つ。そこには、ヴァンパイアの文字が見てとれる。
「あなたは、ヴァンパイアなの?」
緊張してしまって言葉が出ない。
「どうしてここに来たの?」
今度は少年が、目の前の扉を見つめたまま尋ねてきた。透き通った声だった。
「お兄ちゃんに……」
会いに来た,が繋がらなかった。会えないことは知っていたから、途中で言うのを止めてしまったのだ。
「僕も姉ちゃんに会いに来たんだ。」
ここで少女は悟った。あぁ、この子も同じだ,と。この表情は、見たことがある。
窓に映った自分の表情にそっくりだった。
「パプリ、おんなじくらいの子と初めてお話しした。」
少年の方を向くと、彼も同じように少女と向かい合った。
「僕も。……パプリっていうの?」
同意と共に質問も返ってきた。名前のこと。
「うん!パプリエールっていうの。パプリでいいよ、みんなそう呼ぶから。
あなたのお名前は?」
「僕はエルーナ。……そろそろ僕行かなきゃ。」

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