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LOST MEMORIES CⅡⅩⅨ

彼こそが、少女パプリエールが兄と呼ぶ人物。
「パプリ……!?なぜこんなところに!?
っ……!」
お兄ちゃん、そう呼ばれた彼は、痛みに顔を歪ませた。そして、ただでさえ白いその顔を、パプリエールの横にいる少年エルーナを見て、軽く青くした。
「君はっ……!」
中央では再び大きな音がする。
彼はばっと振り返り、ある女性の名を呼んだ。
「僕の姉ちゃんの名前だ……。」
この爆音の中で、常識的に届くはずのない声は、確かに届いたらしい。彼よりはだいぶ身長の低い、可愛らしい女性。パプリエールより10個ほど年上でありそうだが、女性というよりは少女という方が似合うような彼女は、肩で息をしながら、飛んできた。物理的に飛んできたのだ、黒翼を操って。
「姉ちゃん……。」
彼女は、エルーナと同じ真っ黒な瞳を、これでもかというほど丸くしている。エルーナとは似ても似つかない金の髪は乱れていた。
「なんで……。」
彼女が問いかけるのは白髪の彼。彼は、首を振ることで応える。
「わかりません。とりあえず、ふたりのことを神殿から出してほしい。」

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