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流転(後編)

 るなはかまわず、わたしを紹介して、空いている席に着くよううながした。わたしが着席すると、扉が開き、生徒が三人、入ってきた。こちらも初めて見る顔。イケメンが二人、美少女が一人。
「先生、僕たちも紹介してください」
 イケメン二人がユニゾンで言った。
「これは、あなたたちのしわざね」
 抑えたトーンで、るなが言った。
 イケメン二人が何か言おうとするのを、るなは手で制した、ように見えた。
 イケメン二人が口から血を吐いて倒れた。
 美少女が動いた。おそらく、るなと同じ能力を持っているのだろう。るなが倒れた。
 美少女がわたしにゆっくりと近づいてきた。わたしに手をかざす。わたしは目を閉じた。
 目を開けると、るながわたしを混乱した目で見ていた。血を吐いて机に突っ伏す。 
 美少女の身体を手に入れたわたしは、満足して学校をあとにし、原宿に遊びに出かけた。原宿駅で、わたしはスカウトされた。
 しばらくして、わたしはアイドルになった。わたしはやりすぎない、ほどほどの天然キャラを演じた。無知で世間知らずな人間は、安心できるキャラクター、素朴でわかりやすい天然を好む。裏表のありそうなスター性のあるキャラクターは単純な認知の枠組みでは処理できないのだ。安心できるキャラクターほど狡猾なのに。
 わたしは売れた。売れまくり、人気絶頂で、ステージから消えた。交通事故で死んだのだ。ひき逃げ事故だ。犯人は見つかっていない。見つかるわけがない。事故は見せかけ、実は政府の手によって殺されたのだ。真っ先に、わたしが記事にした。新聞記者になったのだ。

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