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無題

あの人の詩が止まってから
もうどのくらい経つかしら

随分と年の離れたあの人の言葉は
毅然としていて柔らかくって
励ましたり怒ったり感心したり
いつだって力強かった

あの人の詩が止まってから
もうどのくらい経つかしら

幾らか追い付いたあの人の言葉は
揺らいでいて青臭くって
藻がいたり歯噛みしたり焦がれたり
存外と人間臭い

味の出てきた詩集は
日を重ねる毎に色を違えて
少し黄ばんだその本の
最終頁は黙したまま

馴染みの言葉を辿っていけば
たっぷりの幸福に浸れるけれど
我儘な私は祈るように
沈黙が破られるのを待っている

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  • あ、わかります…
    此処からいなくなった偉大な先達のことだったり、新作を発表しなくなって何年もになる作家さんやミュージシャンだったり。

    高校の頃は怖いものがなかったのに、今は勿体なくて(買うだけ買ったのに)先に読み進めないでいるシリーズものの文庫があったり、やっと探し当てたのに買う気になれないアルバムがあったり。

    もう7年近く、此処にいるといつの間にか年齢だけは追いついたセンパイたちもいるけれど、なんだかいつまでたっても手が届く気がしない日々です。

    そんなもどかしさや淋しさ、少しの幸せな気分、素敵にあらわしてくれて有難う。

  • シャアさん

    終わりや区切りを目の前にすると尻込みしてしまう時ってありますよね。遺作やシリーズものの最終巻は読み始めるまでに随分と時間がかかります。

    中高生の頃はずっとお話できると思っていた此処のお兄さん達とはもう随分と疎遠になって、覚えている詩やレスには今でも支えてもらっているけれど、時々それだけを握り締めて此の先の人生を生きていくことが酷く心細くなることがあります。
    もう歳を越してしまった方達も多いけど、まだまだあの時のあの人達の方がずっと大人な気がしてしまいます。

    こちらこそ、詠いたかったことを汲み取って下さってありがとうございます。