0

LOST MEMORIES CⅣⅩⅦ

「一番近くでお嬢さまを守らなければならない私が傍にいて、何が悲しくて成人したてのヴァンパイアにマーキング紛いの行為をされて返されなければならないのです。」
何だろうこの感じ。
相変わらず顔は上げないチャールズの、その髪に触れる。
もしかして。
「妬いてるの?」
いいとこどりしたヴァンパイアに。年下の、成人したばかりの彼に。
要は、ウルフに対する注視をあまり優先しなかったために付き人としての任務を果たせず、一方で承けたばかりの随身具を左手の薬指につけるなんていう意味深なメッセージとともにマーキング紛いのことをされた状態で家に返されたことが気に喰わないと、そういうことではないのか。
「……ちょっと違います。」
小さい声が聞こえる。
天の邪鬼、違うくない。
不貞腐れるようないじけているような。
「娘を嫁に出す父親の気分なんです。なんなら、彼氏に妹を取られた妹離れできない兄でも構いません。」
娘もいなければ一人娘の瑛瑠はお婿さんを迎えるはずで。
兄とはまたなんとも……。
キャラ崩壊も甚だしい。
そうだ、あの夢の内容を聞いてみようか。
黙りこくってしまった空気を、ふたりは少しの間共有した。

レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。