人に別れを告げない世界 別れが多すぎるが故に、悲しくならぬように苦しくならぬように、最後の姿に縋らぬように さよならだと分かっていようと 大切な人ほど別れを告げずに去っていく あなたが私を忘れますように できるだけ悲しくなりませんように 願わくは生きて 生きていて いやだ 彼の後ろ姿はこの身を焼き切るにはあまりに十分すぎた さよならも言わないあなたが 泣くこともできないわたしに 唇にあたたかいものが触れた それが 初めての別れの痛みだった