僕のこと好きだろ
と
指先で
髪をすくあなたに
思わず
うん
と
返事してから
ううん
と
否定した
だってその日は
ばっちり化粧をしていて
お気に入りのワンピースに
おろしたての靴をはいていたから
本当に好きになってしまうと
ものにしたいという気持ちより
嫌われたくないという気持ちのほうが先立ってしまう
もうつき合っちゃいなよと
けしかけた友だちと
あなたはつき合うことになった
満員電車に揺られ
バスをやりすごすうちに
記憶は薄れて
思い出は鮮明になってゆく
また夏が終わる
わたしはまだ
髪をショートにできない