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女心と秋の空[2]

「ケンくん?」
「ん?どした?」
 ナナミに呼ばれて振り返る。ただひとつの点を除いて、いつもと同じ彼女がこちらに微笑みかけている。
 髪が短くなっていた。昨日までは胸の辺りまで合ったのが、今では顎のラインまでバッサリとなくなっている。
 そうか。"今日はちょっぴり遅くなる"って言ってたのはこれか。
「唐揚げ、どのお皿で出す?」
「うーん、じゃあその黄色い縁のヤツ」
「えっと、コレ?」
「それそれ」
 ナナミは最近髪型に凝り始めた。あるときはお団子にしてみたり、またあるときは三つ編み、はたまたツインテールやワンレングス...。
 ナナミが髪型を変える度に、「髪型変えた?」「かわいいね」「似合ってるよ」等と声をかけ、彼女も嬉しそうにしていたが、六回目を越すと、もう何も言わなくなった。ナナミの髪型がコロコロと変わるのは、もうすでに日常茶飯事だった。がしかし...
(こんなに切ったのなら、言ってやった方が良いのか...?)
 そんなことを考えながら、二人一緒に食卓につく。
「いっただっきまーす「いただきます」」
 手を合わせたあと、ケンジは缶ビールのプルタブを引いた。カシュッと小気味の良い音が口角を吊り上げる。
「ナナも飲む?」
「あ、もらうー」
 自分のを注いだあと、ナナミのグラスにもビールを注いでやる。やはり炒め物にはビールだな。昼飯をあまり食べていなかったこともあって、どんどん箸が進む。


「ねえ、ケンくん?」

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