空気は乾燥してるし毎日嫌なことばっかだしまわりは嫌な奴ばっかだし田舎だし学校遠くて通うのめんどくさいしでもお母さんうるさいからしぶしぶ唇の皮を歯でむきながらほら、ぷぷぷって歯の先でむいた皮吐き出しながらとぼとぼ歩いてたら汽車来てたからでっかい胸揺らしながらホームに向かって階段ダッシュしてわたしの胸はお母さんゆずりの巨乳でずっとコンプレックスで高校卒業したら東京で絶対小さくする手術するんだって三年前から強迫的に浮かんでくる観念にまた頭支配されちゃってわーってなっちゃってホームにうずくまってたらトレンチコートに肩かけ鞄、ハット姿の哀愁漂わせた初老の紳士が大丈夫ですかって声かけてきてうつむいたまま大丈夫ですって言ったら、「そんなに世のなか素晴らしい人いますか? あなたはまわりにばかり求めているようですがあなたは素晴らしい人に見合うだけの人なのでしょうか。まあそんなことはいい。あなたを傷つけてくるような人はあなたより劣った人なのです。そんな人に出会ったとき、わたしだったらほっとします。自分の劣等感を刺激されずにすみますからね」なんてぬかしやがる。
何言ってんだこのじじいって思ってからもう帰ろって思ってとりあえずベンチに座って呼吸ととのえてたらじじい、肩かけ鞄からコンビニのおむすび出してきて、「朝ごはん、食べてますか? 朝食べないから貧血起こすんですよ」って。うつむいてたけど絶対にやにやしてやがるのはわかった。
むかついたわたしはおむすび(沖縄塩)引ったくって貪り食って顔を上げたら地元の観光協会の作った稲荷大明神のオブジェ。
田舎は変化しない。老化するだけだ。塩おむすびび色の雪がまた今年も。けっ、死ねよ。どうせなら稲荷寿司よこせ。