大切な物語はすぐそこ。
胸が詰まるような、甘酸っぱくて最高にクールな、
手の届く、既にふれているのに、
僕の手の中にあるのに、
僕のものじゃない。
もっとはっきり言えば、
恋の話も眩しい青春も、
この本にはあるのに、あの本にもあるのに、
僕にはないって話で、
そう、それらから目を離してみれば、
あまりに何もない現実があって、
それがひどく悲しいってわけじゃないけど、
少しの寂寞というか、
ああ、結局はここから出られないし変わらないし、
それは僕が物語の主人公でもないからなのかもしれないけど、
さっきまで見ていたのはやっぱり夢だったんだな、ていうのが、
浮きたっていた心を、ほんとうに急激に冷ましていって、
結局僕は、夢想の中で生きていた方がよっぽど青春してるんだって思ったことが、
ただそれだけが、ほんのちょっぴり寂しくて、
ほんとうにほんとうに悲しくて悔しかったりも、するんだ。
そしてどうせ明日には、ほんの気の迷いとして零れ落ちてしまうこの感情が、今はただ本当に愛おしかったり。