「被験体、良好です」
その声でおおよそ人とは呼べない「それ」が目覚めた。
「後はヤツから渡されたこいつを入れるだけか...」
「これで俺達、やっと家に帰れるんですね。久々に嫁の料理が食えるんですね...」
「あぁ...だが気を抜くなよ。こいつがどんなヤバいブツだか知らんがあの暴君のことだ、何が起こるか解ったもんじゃない...」
コイツ...たかだか人間の分際で...いやまて、私はなんなんだ...
「大戦まで起こして、その上こんなものまで作らせて...いったい、ネフェリム様は何をする気なんでしょうかね」
ネフェリム...聞き覚えがあるな...
「それ」は遺伝子レベルでの応答の元にようやく答えを出した。
そうか...私の主か...
「さぁな、俺達はただのしがない科学者だ、ヤツに対抗する力なんてねぇ...ヤツと同罪になった時点でロクな結果にはならんだろうがな」
「それ」は会話を聞きながら徐々に状況を思い出してきた。
思い出した...いや、覚えているのか...?私は主様に作られたモノ...どこかに私のコアがあるはずだ...私が私を取り戻さなければ...